深沢真太郎のひとりごとblog 

トップ > 「失言」に対する世の中の反応は、極めて数学的な現象である。

「失言」に対する世の中の反応は、極めて数学的な現象である。

ビジネス数学の専門家、深沢真太郎です。

 

今回は少し長めですが、あるニュースを観て感じたことを。

エッセンスは文化放送「The News Master TOKYO」のWEBサイトでもコメントしております。

http://www.joqr.co.jp/nmt/column/post-87.php

 

—————————————–

 

政治家や著名人などの「失言」が大きなニュースになっています。

つい最近も復興大臣の「東北でよかった」という発言がテレビやインターネットを賑わし、ちょっとした“事件”になりました。

 

もちろん個人的に「失言」の内容そのものに対して思うところはありますが、

それよりも私がここで問題提起したいのは、このような「失言」に対する世の中の反応の仕方です。

そして実は、そのメカニズムは数学教育にあるメッセージを投げかけているように感じています。

 

繰り返しですがこの記事の主題は「受け手の反応の仕方」であり、

冒頭の復興大臣の発言はあくまで事例のひとつに過ぎません。

公人が公の場で誰かを傷つけるような発言はするべきではない。

言ってよいことと悪いことがある。

これが大前提です。

 

では本題。

このようなケースに対する世の中の反応の仕方には少々気になる部分があります。

具体的には、100%のうち1%でもNGがあればそこを徹底的にフォーカスし、

すべてNGとし、他の99%はなかったものとする論調を多く目に(耳に)することです。

 

そもそも、人間は間違える生き物です。

完璧な頭脳。完璧な容姿。完璧なスピーチ。完璧な振る舞い。完璧な人間。

完璧であることのほうが極めて珍しい。

言い換えれば、完璧なほうが不自然ではないでしょうか。

これまでの人生で「ついうっかり」を経験したことのない人などいないはずです。

人間とは、そういうものなのです。

 

にもかかわらず、たった1%でもNGがあればすべてNGとする。

「失言」や「不倫」をした人物への攻撃などがその典型でしょう。

「その1%ってそんなに大事?」と思うのは私だけでしょうか。

 

あるいは少し前に某テレビ局のアナウンサーとして入社した女性が

過去にホステスの経験があったことで一度は内定取り消しになるといった事案もありました。

これもまた、「そこ、そんなに大事?」と感じたものです。

(もちろん私はそのような職務経験が「間違い」とも「たった1%のNG」とも思っておりません。念のため)

 

100%のうち1%でも間違いがあるとそこだけを徹底的にフォーカスし、

99%はないものとして短絡的に評価してしまう。

実はここに極めて数学的な構造が存在しています。

 

私の専門である数学は、いわば完璧さの学問です。

たとえば計算問題。どこか1箇所でもミスをすると、不正解になるようにできています。

あるいは証明問題。ほんのわずかな矛盾もない、完璧な論述でなければなりません。

 

数学の授業はそんな「たった1箇所のミス」を許さない空間になっています。

数学の試験はそんな「たった1箇所のミス」を許さない状況を強いることと同義です。

 

要するにたった1箇所でもミスがあれば、それは失敗だと結論づけられる。

それが数学なのです。

そして、その「たった1箇所のミス」ですべてを否定することができる仕事が、数学の教育者という仕事です。

 

そう考えてみると、現代は数学の教育者のような人物がたくさんいるともいえます。

「たった1箇所のミス」ですべてを否定する人のことです。

 

 

数学は嫌われる教科の代表です。

にもかかわらず、現代人はなぜか数学的な行為をして人を攻撃している。

私はもしかしたらこれまでの数学教育がそんな人間をつくっているのではないかと思うことさえあります。

まあ、ちょっと考え過ぎな感もありますが。

 

ちょっとでも間違えたらあなたは不正解、

という教えは正しいのか。

max20160i9a9490_tp_v

※イメージです

 

専門家としては考えさせられます。

 

ですから私は様々な場で「正解のない」「間違いを許す」数学をするべきであると発言しています。

正解を出すことの喜びを教えることはとても大切なことです。

でもそれと同じくらい、間違ったことに対する姿勢や解釈を教えることも大切ではないでしょうか。

 

もしこれからも大人や教育者が「たった1%のNG」だけで学生を評価するのなら、

学生は当然そのような大人になります。

(もちろんそんな教育者はごく少数だろうと信じていますが)

 

ただ、実際のところ私はビジネスパーソンの教育をしていて、特に若者たちからそんな匂いを感じます。

「自分は絶対に間違えたくない」

「何もしない(言わない)ほうが賢い」

「いちど失敗したらもう終わり」

という価値観です。

そんな人間はおそらく、自分では何もチャレンジしないが誰かの1%のNGは攻撃するような人物になるのです。

なんと寂しいことだろう。

 

数学の授業はそんな人間をつくるためのものではありません。

教育者の仕事は、学生の回答に◯×(マルバツ)をつけることでもありません。

学生に論理的な思考力やコミュニケーション力を身につけることに本質はあります。

 

今回の“事件”から、数学の指導者がそんなことを感じ取ってくれているといいなと思います。

 

 

 

【ビジネス数学カフェ 201704027 Vol13】

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

<BOOK>

「数学的に考える力」をつける本 講談社(単行本) 1,400円(税別)

夕張市長本_カバー&帯

「数学的に考える力」をつける本

数学的コミュニケーション入門 〜「なるほど」と言わせる数字・論理・話し方〜

幻冬舎(新書) 800円(税別)

cover+obi

数学的コミュニケーション入門

深沢真太郎の著作一覧

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

ビジネス数学TV <Business Mathematics Television>

スクリーンショット 2017-04-02 22.44.38

ビジネス数学の専門家 深沢真太郎 ~数字が苦手な人の救世主~

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

<RADIO>  『深沢真太郎のビジネス数学カフェ』

スクリーンショット 2017-04-02 23.00.30

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

<MAIL MAGAZINE>  数字に強いビジネスパーソンを育てる方法

<COLUMN> シェアーズカフェ・オンライン

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★