ビジネス数学の専門家、深沢真太郎です。
先日、拙著(ビジネス書)をお読みいただいた高校の数学教師の方から御礼のメールを頂戴しました。
そこに書かれていた一文をご紹介します。
(ここから)
現場の教師は実際に「統計」を用いることがなく,どのように生徒に伝えたら良いかを長らく考えておりました。しかし本書を読み,その方法がわかったような気がしております。私自身,民間企業での経験がないため本書のような内容は大変ありがたく感じました。
(ここまで)
この文章を読んで、著者としてとても嬉しく思うと同時に現状の学校教育の問題点を端的に表現しているなとも感じました。
社会は「実学」を求めるようになり、いかに役立つかを教えるべきといった主張が聞こえてきます。
もちろん私もその一人です。
しかし、現場の教師にそれを要求するのは酷というもの。
ではどうすればよいかという議論になったとき、多くの方はこう言います。
「ビジネスで活躍している実務家がどんどん教師になればいい」
つまり実務家のキャリアチェンジが解であると。
もちろんそれが理想でしょう。
しかし、おそらくそれは無理です。
たとえばこんな主張。
「東京にいると人間関係に疲れてしまう。いっそ、沖縄にでも永住してゆったり、自分らしく生きればいい」
主張の内容はともかく、現実そんなことができる人(する人)はごくわずかです。
それと同じこと。ではどうすればいいか。
私はこう考えます。
「変換するのではなく、体験だけすればよい」
私は企業研修が主たる活動になっていますが、研修というものは「普段とは違うことをする場」と定義しています。
だからこそ教育効果があるのですが、その研修が10年間も続くことなどあり得ません。
短い期間で研修は終え、すぐに現場に戻っていくものです。
先ほどの沖縄の例に当てはめるならば、1週間くらい沖縄に行ってのんびりし心の洗濯をする、といったところでしょうか。
これなら実際にできます。
教師にせよ会社員にせよ、真逆に変換することは現実的ではありません。
しかし、真逆を体験することならどうでしょう。
もしも学校の先生が1年間、
研修として会社員を経験できたらどうなるか。
教科書の世界とリアルなビジネスの世界の相違に愕然とするでしょう。
目に見える成果を出さなければならない厳しさを知るでしょう。
会社員をしている親御さんの気持ちがわかるでしょう。
教師に戻ったとき、これから社会に出る子供達に何を伝えたらよいかを考えるでしょう。
たとえば冒頭でご紹介した高校の数学教師の方なら、一般企業でマーケティング部門に1年でも在籍できたら最高です。
「統計」を実務にどう使うのかを知るには十分過ぎる時間と経験です。
そして、教科書に書かれていることの中でどれが本質でどれがそうでないのかを考えるでしょう。
おそらくこの教師は、それまでは正解のある問題ばかり出題して◯×(マルバツ)をつける仕事ばかりだったのが、「正解のない問題」をテストに出題するようになるでしょう。
子供達の個性あふれる回答を見て、教師自身も子供から学びを得るはずです。
逆にもしも会社員が1年間、
研修として学校の先生を経験しなければならないとしたら何が起こるでしょう。
「なんでこんな勉強をするんだ?」を自問自答することで、本質を掴む思考トレーニングができるでしょう。
授業を通じて、プレゼンテーションスキルが飛躍的に高まるでしょう。
言うことを聞かない相手をどうマネジメントするか、知恵を絞るでしょう。
あなたの子供の担任教師は、他にもたくさんの子供を預かっているという当たり前のことに気づくでしょう。
実際にそんな研修制度が成立するかどうかという議論は当然あります。
しかし、私がここでお伝えしたことの本質はそこではありません。
場を変えると何が起こるのか、
ということです。
私はかつて大学院で数学を専攻、予備校の数学講師という経験があります。
同時に、主にファッション業界で会社員を10年以上経験しています。
ある意味「真逆の場」にいたことが今の自分をつくり、そして私の提唱するビジネス数学の根底になっています。
この記事をご覧になっている方の中には、人を育てたいと思っている経営者や教育関係者の方も多いでしょう。
あるいは自分自身を変えたいと思い悩んでいる方もいるかもしれません。
そんな方にこそ、お伝えしたい。
「普段とは違う場に、思い切って真逆の世界を体験してはどうでしょう」と。
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